恋愛

2011年1月27日 (木)

ビノシュ、魔性の女

先日、「ポンヌフの恋人」の記事を書きましたが、
ジュリエット・ビノシュという女優さんは比較的好きな女優さんです。

ただ作品によっては、「ちょっとこの役は合わないでしょう〜」というのも多いので
好きな作品とそうでないのと分かれるのですが・・・・

ビノシュでよかったの?この役?と、1番考え込んだのは
「ダメージ」
51hnnr4z2kl_2
1992年 イギリス・フランス映画

ルイ・マル監督です。

社会的に高い地位にあり、家庭人としても満点な男が、
息子の婚約者と破滅的な恋に落ちるお話です。

心に傷を負ったヒロインを演じるのはビノシュ、
そして、禁断の恋に溺れていく男、スティーブンにジェレミー・アイアンズ。

彼はこういう役が非常によく似合うなぁ・・・
イギリス紳士らしい、硬質で隙のない佇まいと美しさが
我を見失って破綻していく様が絵になるのです。

ヒロインと男の間に言葉はありません。
出会って見つめあい、あとはただもう溺れゆくのみ・・・・

ジェレミー・アイアンズの、徐々に理性も吹っ飛んでいく壊れっぷりが、
もの悲しい・・・・
に比べて、ビノシュの方はちょっとうわてです
破滅的な恋に身を置きながらも、頭のすみはどこか冷静な感じとでもいいましょうか・・・

そしてヒロインのお母さんも怖い・・・・
魔性の女の母も、やはり強者。4度も結婚を繰りかえしているというこのお母さん、
もちろん初対面で2人の関係を見抜きます。
結婚式を前に双方の親子が集っての食事会。
帰り際、スティーブンに、「これでやっと娘も幸せになれるわ、
身を引いてくださいね。おわかりでしょ?」とさらりと言うあたりがとっても怖い。

ラストは、さらに加速して悲劇に・・・・

最後の最後、アンナと別れ、家族とも別れ、
異国の地で過ごすスティーブンのラストシーンと台詞が、
ここでやはりビノシュありきだったのか〜と、
絶妙な配役に納得したところでもありました。

恋の形も様々ですが、
スティーブンは、魔性の女に翻弄され、すべてを失うかもしれない
危険な関係に溺れていくことをどこか望んでいたようにも思います。
その代償がここまで大きなものになるとは、もちろん知らずに・・・・
そしてヒロイン、アンナもスティーブンのそんな無意識の欲望を
最初からちゃんと感じ取っていたからこそ、近づいていったんでしょうね〜

Damage_binoche
魔性の女もいろいろで、自ら自滅していくファム・ファタールもいますが、
決して自分は破滅せず、ことごとく男性を破滅させていくクールなタイプは
怖いですなぁ〜

やっぱりこういう映画はルイ・マルが撮ってこそでしょうか・・・


ささきみえこHP http://homepage3.nifty.com/sasakimieko/

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2010年7月26日 (月)

アジアの夜

私は映画好きではありますが、どちらかというと洋画にかたよる傾向があって、
アジアの映画はそんなにたくさん観ていないのです。

そんな中で、ほぼ全作品観ているのが、ウォン・カーウァイの映画。
今や、国際的にも大活躍ですね。

どの作品も印象的ですが、
1番好きなのは「欲望の翼」と「花様年華」。

「欲望の翼」は今思えば香港映画のスターがそろって出演していた
なんとも贅沢なキャストの青春群像劇です。
今は亡きレスリー・チャン演じるプレイボーイのヨディ、彼をめぐる女性達、
彼女達をめぐる男性達・・それぞれ6人の視点と物語が
絡み合いながら進んでいきます。
51fhyr09nyl_sl500_aa300_
1990年 香港映画

すれ違い、喪失と再生、そして旅立ちといった、
ウォン・カーウァイらしいストーリー展開に、
テネシー・ウィリアムズの戯曲「地獄のオルフェウス」から引用された「脚のない鳥」が
印象的に使われています。

なによりも、激しく降り続く雨、むせ返るような湿気、
うっそうと重くぬれている熱帯雨林のショットなど、
アジアの空気が、濃厚に映画を満たしています。

物語は完結する事なく、登場人物たちの人生そのもののように
未来へ繋がっていくのですが・・・・・
最後の最後に登場する、トニー・レオンのシーンがなんともかっこいいの・・・・・

日本人俳優も含め、アジア圏の俳優のなかでは、一番好きなトニー・レオン。

ウォン・カーウァイ作品にはなくてはならない俳優ですが、
「花様年華」では、もの静かな中に、知性と色気を感じさせる
大人の男を演じていますね。
F0158371_2349389_2
2000年 香港映画

「花様年華」はストーリーももちろんですが、赤や黒を多用した色彩や、
物語の舞台となった1960年代の香港の風景、マギー・チャンの美しいチャイナドレス、
主人公達が食事をとるレストランの薄暗い明かり、夜の町の路地の暗闇、
雨、煙草の煙、そして、ナット・キング・コールの歌声・・・といったものたちが、
絡み合い、重なりあい、この映画の何とも言えない美しさを紡ぎだしています。

お互いの結婚相手が不倫関係にある男女の、
それゆえなのか、運命的なのか、
惹かれあいながらも、一線は越えずに
手を伸ばせば触れられるぎりぎりのところで、
ためらいながら揺れ動く感情が、
濃厚な官能性を生み出しています。
T0000401_3

秘めた恋心が生み出す痛みと
目眩のようなエロティシズム・・・

寡黙な大人の男と、咲き誇る花のように、艶やかでどこか怪しい美しさの女を、
トニー・レオンとマギー・チャンが、静かに、でも激しく演じています。

この映画も、アジアのたっぷりと水気を含んだ、どこか甘く重い空気が
漂っていますね。

トニー・レオン×カーウァイ監督では、
「ブエノスアイレス」も印象的だったかな。
B0002xg7no
1997年 香港映画

全くの異国アルゼンチン、地球の裏側までたどりついてしまった
男2人のカップル。
なんだか切なく、でもどこかキュートな男達を、
トニーとレスリー・チャンが演じてました。
独特の映像美も健在。

今、外はにわか雨でぐっと湿度が上昇。
なんだか久しぶりに、トニー・レオンの悩める顔が観たくなりました。

ささきみえこHP http://homepage3.nifty.com/sasakimieko/


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年5月27日 (木)

手紙、恋文

最近はめっきり手紙を書かなくなりました。

今更ながらメールは便利。
いつでもどこでも瞬時に連絡が取りあえて、
電話のように否応無しに相手の時間に割り込む、
ちょっとした無遠慮さもない。

必要な連絡、コミュニケーションの大半は
「まずメール」という生活形態になってから久しいけれど、
昔はよく手紙を書いたものだなあ・・・・と
ちょっぴり懐かしく思い出す。

転校しちゃった友人へとか、
海外文通などというものをしていた時期も。
遠距離恋愛をしていた事が何度かありますが、
その中の1人は、マメに手紙を書く人だったので、
手紙を待つのがとてもうれしかったし、
もらった手紙もすごく面白くて楽しい内容だった記憶があります。

以前のブログ記事で、本の事を少し書いたことがありますが、
「紙」という材質が好きなので、
封筒や便せんの質感や色合いなどに無性に心惹かれる事もしばしば。
文房具屋などに行くとついついチェックしちゃいますね。
鳩居堂とか、丸善なんかの由緒正しいのも素敵だし、
その辺の、ノートの切れ端やスケッチブックなんかに
ぱぱっと書いた手紙などもいい感じ。

大人の手紙はいろいろ文章の形式が気になったりする事も多いですが、
ビジネス以外なら、形式など気にせずストレートな表現の方が
心に響く手紙になることが多いかも。

特にラブレターなんかはね。

ベートーヴェンの不滅の恋文、
クララ・シューマンとブラームスとの書簡、
戦地に行ってしまった恋人に綴られたたくさんの手紙、
古今東西、有名無名の人々の間にかわされた無数の手紙。
「待つ」という一見、非効率的と思われる行為の中から生み出される
「情熱」というものは、メールの利便性の中からは、
こぼれ落ちてしまっているのかもしれません。

こと男女の中の事において、
効率的でないもの、理屈でかたづけられないものの不便さや
白と黒の間の無限のグレーゾーンのあいまいさのなかに潜む
感覚的なものこそが、恋の醍醐味だと思うし、
だからこそ、恋人達には、まどろっこしくも手紙という形式が
よく似合うのだと思う。

Dsc04734
これはまだ会った事のない男女の間でかわされる
書簡集という内容のビジュアルブック。
実際の封筒が貼付けられていて、その中に手紙が入っていたり、
イラストもデザインもものすごく素敵な本です。
だいぶ前ですが、けっこう評判になった本で、この続きもでているはず。
Dsc04727
私が持っているのはこの1冊だけなので、
続きが知りたい!!

ささきみえこHP http://homepage3.nifty.com/sasakimieko/


| | コメント (2) | トラックバック (0)